大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(ネ)955号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(主文)原判決を取消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

(判旨)控訴人信一が控訴人三郞に本件八畳間を使用させていることが、転貸といえるかどうかについて検討するに、成立に争のない乙第一、第二号証の各記載、当審における控訴人南信一本人尋問の結果に本件口頭弁論の全趣旨をあわせ考えると、控訴人南三郞は控訴人南信一の実弟であつて、控訴人信一はもと海軍技術将校で本件家屋に老母及び妻子らと居住していたが、戦争中海外に出るにあたり一時控訴人三郞を本件家屋に同居させて家族のめんどうを見てもらつたこともあるが、その後控訴人信一が帰還してからは控訴人三郞は自ら東京都千代田区神田多町に家屋を借受けここに居住するようになつたのであるが、右神田の家屋はその後家主が変り、新らしい家主から自己において使用する必要があるとの理由で明渡を求められ、訴訟の結果第一審で敗訴し、控訴審で昭和二十六年二月十日、同年五月三十一日限り右家屋を明渡す旨その他の条項で裁判上の和解が成立したこと、ところが右明渡の期限がせまつても移転先が見つからないので控訴人三郞は兄控訴人信一に頼んで一時本件家屋に同居させてもらうこととして、前記日時ここに移転し、神田の家屋は和解条項どおり明渡したものであること、本件家屋においては別紙図面(省略)斜線部分の八畳間を主として控訴人三郞がその妻及び二人の子供とともに使用し、控訴人信一は同図面六畳間をその子供二人とともに(控訴人信一の妻は控訴人信一の帰還前に、老母は昭和二十三年三月にそれぞれ死亡した)使用しているのではあるが、その他の台所、廊下、洗面所、便所等はすべて共用であることが明らかであり、控訴人両名の身分関係からすれば右各部屋もいちおうそれぞれの家族の居室として使用しているにすぎず、日常互いに往のあることはみやすいところである。控訴人信一が控訴人三郞から権利金、賃料その他家屋使用の対価を取得している事実はもとより認めるべきものがない。以上の事実によつてみれば控訴人信一はその実弟である控訴人三郞が従の住居を裁判上の和解の結果明渡されなければならないというさしせまつた必要上、肉親の情誼として同人を一時本件家屋に同居させたものであつて、これに独立の占有を与えたものは解せられず、控訴人三郞は控訴人信一の占有の範囲内で事実上その使用を許されているにすぎないと認めるべきものであつて、これをもつて民法第六百十二条にいわゆる転貸と解すべきものではない。原審における証人長川喜美枝、同青木たま子の各証言及び原審における被控訴人本人尋問の結果によれば、控訴人両名は本件家屋においてそれぞれ炊事を別にし、別世帯を構成していることは認めうるところであるけれども、右両名が前記のようなそれぞれの家族をかかえていることからすれば、あえて異とするに足らず、これをもつて前認定を左右しなければならないものではない。また控訴人三郞が本件家屋に移転してきたのは、被控訴人が控訴人信一に対し明渡の調停申立後のことであることは弁論の全趣旨から明らかであるけれども、前記認定の事情に照せば、控訴人信一が故意に被控訴人の明渡の請求を妨げる目的でしたものとは解せられず、これによつて被控訴人と控訴人信一との間の信頼関係を破るものとも認めることはできない。(裁判官 藤江忠二郎 高野重秋 淺沼武)

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